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自己主張の効用

自分の役割に忠実になるということは、状況に応じてイエス、ノーをはっきり表明する勇気を持つということです。これは自分の精神衛生のためにもよい。

というのは「自己主張」というのは不安・恐怖を消す働きがあるからです。「沈黙は金である」とか「お口は災いのもとである」というビリーフを信じ込んで、言うべき時に黙っていると、ますます屈辱感・劣等感・恐怖が高まってくることがある。ケンカの後味はあまり良いものではないが、沈黙を守ったためにいつまでも後悔するよりはまだましです。

むかし、私はある心理学の先生と受刑者のカウンセリングの助手をしたことがあります。ある受刑者が言うのに、人の家に泥棒に入るとき(自己主張に相当する行為)は怖くない。逃げ回っている時の方が怖い、と。他にも団体交渉のとき、受けて立つより攻めるほうがずっと楽です。つまり攻撃性の外向化は、不安・恐怖を一時的にせよ吹き飛ばしてくれます。そのことを生活の智慧で知っているので、小心者、臆病者ほど怒鳴るのである。怒鳴ることによって不安・恐怖を克服しようとしているのです。

ということはやたらに部下や妻子にあたり散らす上司はよほどの小心者か臆病者ではないかという推論が成り立つ。

これは好ましくないいばり方です。上手ないばり方(役割と維持の主張)とは相手に不快感を与えない役割主張のことです。その骨子は相手のプライドを傷つけないことです。相手のプライドを傷つけながらの自己主張をケンカといいます。「私は~と思います」式であり「あなたは~です」式の非難型のものではない。