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己を知る、チーム力を引き出す

ミドルマネジャーは現在、どのような状況に置かれているのでしょうか。

従業員規模100人以上の上場企業に勤め、部下が1人以上いる「課長」を対象とした産業能率大学の2010年の調査では、プレーヤーとしての仕事の方が多い課長は、4割に達しています。そして過半数の人が、業務量が増加していると答えています。

自分自身のメンタルヘルスに不安を感じたことがある人も4割強。その主な原因は、「上司との人間関係」、「成果創出へのプレッシャー」、「仕事の内容」、「部下との人間関係」、「仕事の量」などです。

「時間がない」と感じるマネジャーが大半でしょう。仕事を任せられる部下が育っていない。管理する人数が増えている。雇用形態の変化の中、多様化する部下をまとめなければいけない。職場のストレスが増大する中、メンタル面の管理も必要だ・・・。

信頼されるマネジャーがもつ資質とは

そんな中、課長層には何が求められているのでしょうか。同大学が企業の人事教育部門に対して2008年に行った調査の中では、課長層には「部下育成力」、「問題解決力」がとくに求められています。

こうして見ると、課長に求められることは、リーダーシップを確立しながら、職場での信頼関係および人間関係を構築した上で、部下やチームの可能性を引き出し、成果を上げることといってもいいでしょう。

信頼されるリーダーになり、職場での人間関係を構築し、部下やチームの可能性を引き出すことは、結局時間を節約することにもなります。

それでは、信頼されるマネジャーとは、どのようなものでしょうか。その資質を、下記のように挙げてみました。

  1. 主体的に考え、意欲的に取り組み、行動する力があり、部下の手本となる。
  2. 十分な自己理解があることで、自分の強みや弱み、人との関わり方、仕事のしかた、リーダーシップのスタイルなどの傾向性を知り、自分の可能性をどのように伸ばしていけばいいか、把握している。
  3. 十分な他者理解があることで、相手を尊重し、気持ちをくみ取ることができる。また、多様な人たちと迅速に円滑な人間関係を構築することができる適応力をもっている。さらに、相手の個性に応じた、可能性を引き出す関わり方ができる。
  4. メンタル面が強く、精神的に安定している。困難な状況でも前向きに可能性を探り、課題や問題に対して、落ち着いて対応することができる。

こうした資質を伸ばし、信頼されるリーダーになるため、「エニアグラム(9つの性格タイプのシステム)」がどのように活用できるかをお話しします。

優れた資質や動機を明らかにしてくれる

エニアグラムは、9つの性格タイプごとに、具体的なプロフィールを提供してくれます。各タイプの特徴(長所・短所を含む)、動機、適性、行動スタイル、ものごとへの取り組み方、ワークスタイル、コミュニケーションのしかた、リーダーシップ・スタイル、ストレスの状態と対応方法、可能性の伸ばし方などです。

また、能力開発や円滑な対人関係を阻む思考・感情・行動パターンを分析し、解決のためのヒントも提供します。コーチングの世界でもよく使われています。各タイプのリソース(優れた資質)や動機を明らかにしてくれるからです。


1つ例を挙げてみましょう。上司のあなたが部下に対し、「期待しているよ」という言葉をかけたとします。もちろん、そう言われて、やる気が出る人もいます。

しかし逆に、「この人は自分に何をどこまで期待しているのだろう」、「自分のことを本当に分かっていっているのだろうか」などの考えが頭の中でわいてきて、かえってプレッシャーに感じる人もいます。相手が明確な方向性や責任の範囲を示してくれる方が、力がフルに発揮できると感じるのです。これは「タイプ6」の例です。主な動機として、「安定」を求めているタイプです。

ただし、エニアグラムにおいては、同じタイプの中でも、「健全度の違い」があるという考え方があります。ストレスが強く、健全度が低い人というのは、精神的に不安定で、自己防衛が強く、内面の動機につき動かされがちです。

「タイプ6」の例を挙げてみましょう。健全度が低ければ低い程、不安が強くなり、安定を必死で求める行動をとります。一方、健全であれば、ゆとりがあり、問題があっても落ち着いて対応できます。性格のパターンにとらわれず、可能性を伸ばしていけるのです。

エニアグラムは、タイプごとに、ストレス状態でどうなるか、また、健全になり、可能性を伸ばしていけばどうなるかについて説明していますので、自分自身のためはもとより、部下のマネジメントにも大変役立ちます。

自分に自信を持ち、可能性を伸ばしていく

9つの性格タイプについては、「人間はそんなに単純に分類できるものではないだろう」と、興味を示さない方もいるでしょう。私自身も長い間、同じ理由で性格分類に関心がありませんでしたから、よく分かります。確かに、人間は一人ひとり異なる、ユニークな存在であり、心の奥底は知りようがありません。ただ、人の傾向性を大きく9つに分けてとらえることには、十分有用性がある、と言っているだけなのです。

それは、過去20数年に渡り、数万人の方々に対して研修を行う中で、有効性を検証してきた経験から、確信をもって言うことができます。しかも、さまざまな国でエニアグラムを活用してきましたが、文化を問わず、9つのタイプを見いだすことができるのです。

私は、多くの方々がエニアグラムによって自己理解を深めることにより、自分に自信を持ち、可能性を伸ばしていくのを見てきました。また、他者理解を深めることにより、人間関係が本当に楽になります。

生きている限り、人間関係の悩みから完全に解放されることはないでしょうが、人がなぜ特定の振る舞いをするのかを理解できれば、「なぜこうなんだ」と悩んだり、感情的に反応して時間やエネルギーを費やしたりする必要がなくなります。「なぜ」から一歩進んで、前向きに問題解決に取り組むことができるのです。

お互いの違いがすれ違いや葛藤で終わるのは、大変もったいないことです。エニアグラムを使えば、お互いの違いを理解し、生かし合い、可能性を広げることが実際に可能であるということがよく分かります。

また、「人を枠に入れるのは、よくないのでは?」と思う方もいるでしょう。しかしエニアグラムは、人を枠に入れるためのものではありません。既に持っている性格的パターンを自覚した上で、可能性を広げていくためのものなのです。

最近は、企業でも個性を大事にするところが増え、部下の個性を見極めて対応する必要性が説かれます。しかし、そもそも個性とは何か、を私たちは具体的に教わったことがありません。エニアグラムは、各タイプの詳細なプロフィールを明らかにすることで、自分らしいリーダーシップ・スタイルを伸ばしていくことができると共に、部下の可能性を引き出す関わり方ができるようになるのです。

いかがでしょうか。たとえ納得のいく結果がすぐ得られなかったとしても、あまり気にしないで下さい。本来はここにある情報だけでなく、書籍や研修など、詳細な情報や専門家の助けを必要とするものです。

立脚点を持ち、職場の可能性を引き出すために

タイプについてすぐ結論を出せばいいというものではなく、ご自身を振り返り、自分の本来の気質はどういうものなんだろうと考えること自体が、自己理解を深める上での重要なプロセスです。この資料は、ご自身について検討していただいた後、部下や上司など、身の回りの方についても、マネジメントの参考にしていただけます。

エニアグラムは、私たち一人ひとりがもっている輝きを知り、可能性を広げていく助けとなってくれる、素晴らしい知恵です。急激な職場環境の変化の中で、自分自身を見失うことなく、立脚点をしっかり持ち、職場の可能性を引き出すために、ぜひエニアグラムの知恵を活用していただければと思います。