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やる気を引き出すには

現場のヒアリングから生まれた「モチベーション&コミュニケーション研修」

私がJAL研修で思ったこと・・・・・

現在御社で意識改革・人づくり・リーダー教育・メンタルヘルスなどを研修させて頂いています。 しかしリーダーの方々、あるいは選ばれた方々ではなくグループ全社員に求められる「考え方」を学ぶ研修が大切だと考えます。

研修内容も少しずつ異なるのですが、狙いは同じ。グループ全体で一緒に働く仲間を知り、もっと仕事を楽しめるようになることに他なりません。

JALが経営破たんする以前、私たちは「人づくり推進室」という部署で研修を担当していました。破たん後は、それどころじゃないということで、研修はストップ。その後再始動したときにどんな研修をするべきか考えようと、現場の若手社員にヒアリングをしました。今の現場にどんな思いがあるのか、単刀直入に「どんな研修があったら嬉しい?」といったことも聞いて回りました。 

それを通してわかったのは、「みんなの気持ちも”破たん”していたんだな」ということ。要は、元気がなくて発言がネガティブ。辞めていく人もたくさんいました。会社の再生のためには、リーダー教育も大切ですが、社員一人ひとりの元気の回復もまた必要でした。それなら私たちは現場の若い人たちの心にフォーカスしようと決めたんです。

社員どうしの繋がりを体験させるワーク

こうして2年前から始まったのが「モチベーション&コミュニケーション研修」になります。4~5人でのグループワークがメインですが、必ず違う職種の人どうしを集めて行います。つまり、全員が初対面の状態でスタートするのです。

うきうきコースだと、例えばこんなワークがあります。まず、模造紙の真ん中に飛行機の絵を描いてから、自分の仕事と飛行機がどんなふうに繋がっているか、一人ひとりが描き込んでいく。それをわいわいやっていると、一気に場が温かくなります。その日初めて出会った仲間と自分、それから飛行機という存在がどんなふうに繋がっているのか、実感できるようになる。そうして、飛行機はみんなで飛ばしているものだと気づくのです。

例えば、あるグループには、国内線の予約担当と客室乗務員、飛行機の副操縦士が集まっていました。普段、彼らが言葉を交わす機会はなかなかありません。でも、絵を描きながらリラックスして言葉を交わしていると、誰が欠けても自分の仕事は成り立たないし、飛行機も飛ばないとわかる。JALフィロソフィの中に「最高のバトンタッチ」という言葉がありますが、これは、自分の仕事を引き継ぐ仲間に対して最大の配慮をしよう、といった考え方です。こうして飛行機の絵を一緒に作り上げることで、「最高のバトンタッチ」の大切さを改めて実感できるわけです。

そういうことが、たった1枚の絵を描くだけでわかってくる。逆にいうと、かつてのJALは、それぐらい縦割り意識が強くて、仲間たちの存在を意識することが少ない会社だったということなのですが。

一体感を職場に作るには

頭の固い一部の人には、研修の名前に「うきうき」とか「わくわく」とかいうネーミングは何だ、ふざけてるのかと言われたこともあります。でも私たちは現場にヒアリングに行っていましたから。内容もネーミングも、これこそ今のJALに求められているものだと確信がありました。

この研修を始めてまだ1年目でのころ、日々の業務のなかでどんな成果が上がっているかは、正直、まだわかりませんでした。でも、みんな研修自体は楽しんでくれているようです。

1つだけ、研修しているうちに「これは問題だ」と痛感したことがあります。「わくわくコース」の研修中、課題解決のワークをしたら、本社でそれを仕事にしている人と現場の人との間でスキルの差が発覚した。それがきっかけで、本社の人がシラけてしまったんです。要は「現場の人の悩みはこの程度か」と。ワークも自分たちで仕切り始めた。

これが、私たちとしては不本意でした。彼らに手際よく仕切られると、現場の人たちは主体性を発揮できない。課題解決はうまくいくかもしれませんが、グループワークの意味がなくなってしまいます。

JALの縦割り意識の一番悪いところが現れてしまったな、と思いました。私たちは人材育成をやる前から、これを何とかしたかったんです。本社は自分たちで決めたことを現場に押しつける。現場は「現場のこと何も知らないくせに」と不満をためる。JALグループが力を結集できないのはここに原因があると思っていましたから。

それからは研修を始める前に、1つの課題をみんなで解くことに意味があるということをきちんと説明するようにしました。組織の意味やそこで一人ひとりが役割を果たすことの意味も。課題解決ができるから偉いんじゃない、それぞれに役割があるからみんなで課題解決をしないと意味がないんだ、と。ただ問題解決を学ぶだけの研修なら別にありますしね。

やる気のスイッチは自分が持っている

最終的には、どのコースにおいても「モチベーションのスイッチは自分が持っているんだよ」ということを伝えたいと思っています。やる気がでない理由を会社がどうだ、お客様がどうだ、上司がどうだと言っているうちは、何も解決しません。どんな課題も自分のものとして捉えて、「自分に何ができるのか」を常に考えてほしいんです。

だから、時には厳しいことも言いますよ。例えば研修中、みんなが課題を発表するときに私がコメンテーターとして立つことがあります。そこであまりにも「会社のせい、人のせい」にする意識が強いようだと「それは違うでしょ、あなたは何ができるの」とツッコんでいきます。

確かに、現場は忙しくて、その割に人が減っているので、みんな疲れています。そのせいで「自分たちは犠牲者だ」ぐらいに思っているフシもある。でも、そんなことを言っても解決しないでしょう? 自分に何ができるか考えてみようよ。そんなふうに誘導していくんです。

組織を元気にするのは、社員一人ひとりの働きにかかっています。組織が元気になれば会社が元気になる。会社が元気になれば、お客様はJALを選んでくださる。そしてJALグループ全体が元気になる。まずはあなた自身のモチベーションのスイッチを押そうよ。そんな話をするんです。

「自分だけが辛いんじゃないんだ!」

受講者のアンケートを見る限り、反響として多いのは「同世代の仲間がいろんなところで頑張っている」「自分の知らなかった仕事がいっぱいあると気づいた」といった内容です。「仲間も頑張ってる。自分だけが辛いんじゃないんですね」という声もすごく多いです。共通の悩みを発見できたら、一緒に解決策を考えることもできる。こうして生まれる一体感は、縦割り意識の強かったこれまでのJALには、なかったものです。

集めた声を別の研修に反映させることもあるんです。これは私たち研修をする側の成果ですね。

例えば、彼らからは「上司にもこういう研修をやってください」という声がよく聞かれます。「どきどきコースとか、はらはらコースを作ればいいのに」って。でも、あながち冗談ではないんです。むしろ、その通りだと思う。上司たちの心が落ち込んでいて暗い顔をしていたら、若い世代がどれだけ研修で元気になっても、すぐに元通りですから。

だから、例えば新任管理職の研修をするときには、「皆さん、部下たちにどう見られているかわかっていますか?」とハッパをかけます。若い社員がウキウキワクワクして職場に戻っても、組織がウキウキワクワクしていないと研修の成果はあっという間に薄れてしまう。ウキウキワクワクした組織をつくるのは誰ですか? 上司であるあなたたちの役割でしょう? こういうことを、かつて以上に繰り返すようになりました。