Your image
Your image

その場しのぎの言い訳を重ねる社員を、心から反省させたい

交渉というと、「自分もしくは自分の組織vs.他人もしくは他の組織」というイメージが強いのではないかと思いますが、大事な交渉の場面の多くは、実は「身内」に存在することが多いと言っても過言ではありません。

ご自分のスタッフや同僚、もしくは上司にもいろんなタイプがいるかと思いますが、失敗を重ねてはその場しのぎの言い訳を重ね、その場を逃れようとする人を見かけることも多いかと思います。

今回は、皆さんの会社のスタッフに、そのようなタイプの人がいると仮定してお話を進めたいと思います。

 

遅刻の常習犯、ケアレスミスを頻発する、仕事を任せても期限に間に合わないことが多い、営業に出しても一向に契約を取れない、などなどいろんなケースが考えられます。

私は心理学の専門家ではないですが、交渉学では、行動心理学の見地からの分析を大いに活用します。

このような場合、最も多いタイプは、ミスや失敗に対して、必ず外的要因もしくは他者に責任を押しつけるということです。

例えば、「たまたま運が悪かっただけ」、「電車が混んでいた、遅れた」、極めつけは「景気が悪い」という言い訳まで考えられますが、決して「自分(の内)に非がある」ということを考えることはないようです。

自分ではどうしようもない原因のために、失敗した、遅刻した、決して自分のせいではない、というわけです。果たしてそうでしょうか?私はこのようなその場しのぎで、かつ外的要因に失敗の原因を見ようとする姿勢では、

kludge

この人はどんどん落ちていくだけだと思います。

もちろん、『プロ』の世界で生きるのであれば、自分の責任で落ちていくことに対しては、こちらとしては責任を負えない、と言いたいところですが、自分のスタッフともなればそういうわけにもいきませんし、その失敗の責任は、ひいては経営者にかかってきますので、何とかしないといけません。どうすればいいのでしょうか?

まずは、この社員についての(起きている問題の)情報を、集められるだけ集めることです。交渉のお話をする際に、「すべては情報をいかに持っているか」が重要です、とお話しいたしますが、この場合もそうです。

まず、事実関係を収集します。例えば、「ある期間内にどれだけ意味不明な遅刻を繰り返したか」、「他の社員や他社からどのような苦情が出ているか」といった情報です。

その上で、本人と直に話すことになりますが、その際、「“なぜ”XXなんだ?(例:“なぜ”頻繁に遅刻するんだ?)」と問いかけ、あとはまず相手の“言い訳”をひたすら聞いてください。

そこで大事なことは、これまでに十分な情報収集を行っているということを匂わすことはしない、ということです。聞きながら、自分が集めている情報と照らし合わせて、情報の内容についての理解を微調整します。

そして、一通り“言い訳”を聞き終えたら、事前に調査した事実と周りからの苦情などをベースに一つ一つ、その社員がどういった問題を引き起こしているかを説明します。

そして、彼・彼女が出してくるであろう外部の要因については、「その他のメンバーはその影響を受けずにちゃんとこなしている」ということも、やんわりと伝えます。その際に、決して「だからお前はダメなんだ!」と相手の人格否定はしないことです。

代わりに「繰り返し遅れるというのは社会人としては非常識で、いくら優秀だとしても、それはせっかくの評価を下げることになる」という、その行動が彼・彼女に与えうる状況をできるだけ具体的に伝えることが大事です。

その次のステップとしては、「次XXしたらどうする」という約束もしくは罰則を、本人にコミットさせることが大事ですが、その際、口先ではなく、署名入りの文書でコミットさせることです。

また、当然「自分で気づいてくれよ!」と言いたいところですが、もし遅刻の常習が問題であれば、「約束した時間の10分前に現地に到着する」とか、「始業時間の15分前にはデスクに来ていること」といった具体的な指示をします。その上で、できない場合は「XXする」というコミットを引き出します。

大事なことは、「彼・彼女の問題を明確に意識しており、解決に協力する」という姿勢と、「自らに問題の原因があることを本人に気づかせる」ということです。それと「決して本人を頭ごなしにダメ扱いして、人格否定をしない」ことです。

問題は彼・彼女の行動であって、人格ではないはずだからです。怒りに任せてそこを混乱させないようにしましょう。本人もどうしていいか分からずに悩んでいるケースも多いかと思います。自分はその問題解決に協力するという姿勢を見せてあげることが大事です。

もし、改善の兆しが見えてきたら、誰よりも早くそれに気づき、そして褒めてあげてください。「誰かに認められる」、その経験を味わうことができたら、言い訳癖も治るかもしれません。もしかしたら、その後、この人が化けてすごい戦力に変わるかもしれません。