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■落ち込むというメカニズムは克服できる
       ~「自分」と「我」の違いを理解すること

最近皆さんのような若い人たちは、終始「落ち込んでいる」と言う話を聞きます。私もそう思う節もあります。仕事で怒られると落ち込む、思うようにできない自分に落ち込む、人間関係で些細なトラブルがあれば落ち込む・・・。草食系男子と呼ばれる“やさしい”青年たちは、上司に怒鳴られてポロポロ涙をこぼすこともあるそうです。

男子たるもの質実剛健であるべし、と言われたころを懐かしむつもりはありませんが、やはり、「ああ時代だな!(隔世の感)」を感じます。

たとえば、叱責されて落ち込むのは「自分は否定された。なんで自分を否定するんだ」と思いがあるからでしょう。では、その「自分」って何なのですか?確固たる自信をもって存在している自分ですか?そうではないでしょう。gixfiz

「本来の自分」などたやすく見つかるものではないのです。仕事(修行)は、その本来の自分に出会うため、本来の自分を見つけるためにある、と言っても良いくらいです。

否定された気持ちになるのは「我」が前面に出ているからでしょう。「おれは正しい」「私は間違ってない」と言うのが我です。それをポコンと叩かれ心がすっかり沈みこんでしまう。それが落ち込むというメカニズムです。我を少しひっこめたら、それで済む話です。

それに、怒られることと否定されることはまったく違います。怒られるのは、その組織なり、会社なりが、そういうルールで動いているからであり、それを逸脱したら怒られるのは至極当然です。

ただ、直せばいい。遅刻したて怒られたら、遅刻しないようにする。仕事でミスしたら、同じミスを繰り返さないようにする。怒る側が求めているのはそのことだけです。おこられる側が応える方法もそれしかないのです。勿論反省の必要はありますが、むやみに落ち込む必要なんか何処にもない。さて、貴方の落ち込み、克服できそうですか。

■「褒めて育てる」のは逆効果

~むやみに褒めても、能力は伸びない。身長と同じく、鍛えなければ、心は強くなない
家庭内を見た時、昔と比べて一番変化したのは親子関係ではないですか。かつて私たちの頃は家庭における父親は、普段はさしてものを言わなくても悪さをしたらガツンと怒る、要所で占める存在でした。

ところが、現代では、父親も母親も、まるで友達のように子供と接します。それどころか、子どもが受験の準備にでも入っていようものなら、腫れものに触れるような扱いをする親も少なくないようです。
もちろん、子どもと積極的にコミュニケーションをとること否定するつもりはありません。しかし、気を使いすぎ、褒めすぎ、は賛成しかねます。

かなり前から、「褒める子育て」が推奨され、それをテーマにした本も多く出されていますし、褒めることを子育ての柱にしている家庭も少なくないのでしょう。
子育てだけではありません。人を育てるケースでも、褒めることが最も有効だという考えが今は主流になっています。もちろん、褒めるべき時は褒めるのは大切なことです。人はそれで意欲を高めたり、能力を伸ばしたりします。
でもちょっとしたことで褒めてばかりいたら、人は、そこで合格点を出してしまい、さらに努力することや自分を省みるころをしなくなります。場合によっては、せっかくの能力をそれ以上伸ばせなくなり、潰すことにもなりかねません。

わたしの親戚に親子で二つの寺の住職をしている人がいます。曹洞宗、永平寺「修行に行って、褒められるようになったら、帰ってこい」と言われたそうです。
この言葉を常識的に解釈すると、褒められるようになるということは、たいがいの事が出来るようになって、師もお墨付きをくれたということだから、寺でもまずまずやっていける、だから、帰ってきてもよし、と言うふうにとれます。

ところが、お父さんの言わんとしたことはまったく逆さまだったのです。修行道場というところは、怒られに行く場所である。怒られてわが身を正し、怒られて何事かを学んでいく。その修行道場で褒められるということは、どういうことか考えろ。こういつは身を正す気力もない、学ぶ気概もなさそうだ、と師が見切ったということではないのか。つまり、もう伸びしろがないから、褒めておくより仕方がない、と師に匙を投げられたことにも等しいのだ。そんなおまえでは修行道場に迷惑をかけるばかり。だから、帰ってくるよりほかにはない。お父さんの胸の内はそういうものだったのです。
結局、彼は人が2,3年で自分の寺に帰るところが8年間、修行道場にお世話になったそうです。

当然修行と一般の生活は違いますが、鍛えなければ心は強くならない、と言うことは変わりません。身体を強くしようとすれば、誰もが何の疑問も持たず「鍛えるしかない」と考えるでしょう。
褒めすぎというぬるま湯に安住していると知らず知らずのうちに逆効果になっていきます。そろそろ、そのことに気づいて下さい。