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部下を目覚めさせるマネジメント行動とは

多くの企業で、管理監督者層の管理能力が厳しく問われだした理由に、働く人の“意識変化”がある。特に昭和40~50年代に大量の高専、大卒を採用した製造企業では、中間管理職あるいは中高年層は、若い世代の圧力を痛いほど感じている。若い世代には、対等意識、参加意識を基調とする対人観あるいは管理職層から見ると大きく会社離れという一つの現象から、会社観、仕事観が定着してきている。

従って、このような若者の意識をつかみ、彼らにあった活用法を考えないと、若いエネルギーをフルに活用することはできない。
最近の学生に意識調査によると、現代の若者は出世はそれほどしなくても、マイペースで自分の生活を大切にしたい、しかし社会に対してはことなかれ主義に陥りたくないと思っている。
若い世代の意識調査の中で、いま一番際立って大きなものに対人観があげられる。
それは平等主義と権利意識が深く浸透し、しかも情報化社会の申し子であるからだ。また、肩書をカサにきた権威主義的態度を嫌い、選挙による多数決原理で決定したことなら納得するということもある。
ごく概観的に若者意識の際立った特徴を見てみたが、これらの意識を踏まえて管理行動を取らない限り、部下は動かせないということになる。

しかし、管理者層が単に部下に迎合していたのでは管理者は務まらない。部下の期待にこたえる管理行動は、働きたくない、できるだけ楽をしたいという部下への管理行動を取るだけでは、失格と言わざるを得ない。かのD・マクレガーが、X型人間、Y型人間という二つのタイプを挙げたが、これらは二種類の人間が別個に存在するのではなく、一人の人間が状況によってはX型に人間になったり、Y型の人間になったりするということである。

人間はとにかく平和で安穏で、危機感のない状況の時は、人当たりも良く部下に楽をさせてくれる指導者を好みがちである。しかし、いったん事が起きるとそのようなリーダーには不安を覚え、結局信念と実力を持つリーダーへと動いていく。

企業の日常活動が直接生産性につながり、豊かな生活の礎石となっている以上、それは仕事を通じてえる生活の充実感や自己成長に直結しているのである。このことに部下が目覚めたとき、やさしいだけが取り柄の管理者を高く評価するわけにはいかなくなる。部下をそのように目覚めさせることこそ、管理者の役目でもあるのだ。

すなわち、中間管理者の役目を一言で言うと、経営の目標を部下を通じて実行させ、実現させることなのである。
つまり、管理者とは計画、指示、統制の諸々の機能を発揮して遂行する責任者と言うことになるのだ。まさしく、カンリノプロフェッショナーであることが期待されなければならない。

伸びる管理者、伸びない管理者

今日の経営の問題で重要なのは、新製品・新技術の開発、販売力の強化、そして人材の育成・活用、組織の活性化であることが、各方面での調査によっても、明らかにされている。
いま上司としての管理者に要求されているのは、仕事をする部下によって、自ら進んで職責を遂行することのできるような環境作りをすることであり、動機づけを考えることなのである。つまり、人事・労務管理の大切さの認識の中で、いかに部下の能力を発見し、正しく評価できる自らの能力と行動を持ちうるかと言うことにつきよう。

従って、人(部下)を動かす、と言うことは、動かす人間(管理者)と、動かされる人間(部下)とのヒューマン・リレーションズがいかに重要であるかについても、知らなければならない。管理者は、常に自己を厳しく反省し、自分がはたして指導力という点で部下の支持と理解を得ているのか、部下を公平・公正に評価し、次なる進むべき方策を指示・援助しているのかどうか、などを反省しなければならない。
もし、これを軽視して、ただいたずらに自分の考え方を職制と言うだけの立場で押しつけ命令しても、部下は心からはこれに動かされない、という結果に終わることは明らかである。

管理者は、事務能力において、技術能力においてあるいは販売能力において、優れたものを持っているはずである。
しかし、ともするとそれにおぼれてヒューマン・リレーションズ(人間関係)の重要さの認識を怠り、無視することも少なくないのである。
部下が、上司の意を介して追従してくるかどうかは、上司としての人格・人柄と言う全人格的なものによることが多く、これらの能力とは異なるということを肝に銘じる必要があるということだ。

一方、部下と言う使われる者自体の心構えも、より大事であることは言うまでもない。部下従業員の中には、自分が働く意欲が起らないのは、管理者が悪いからだ、つまらない仕事で働きがいがない、というものもいる。管理者と意見があわないからと言って、これをすべて管理者のみの責任にするのではなく、本人自らの努力と興味で、楽しい方向へ持っていくことこそ必要と言えよう。なぜなら、不平はいくらいっても、それ自体何の解決策にもならないからだ。管理者たるもの、管理の本質を原点に立ち返って考え直すとともに、仕事本位プラス人格尊重の精神で、部下を厳しく、やさしくみつめていくことが、特に要求される。

<伸びる管理者>

  • 毎日の仕事に必ず問題となる項目を織り込んでおく
  • 仕事は計画第一主義、周到な分析の上綿密な計画を立てる
  • 問題の解決は、満点主義よりも重点主義で迅速に処理する
  • 上司に対しては、その答えを聞くより問題を提起する
  • 部下にはいつもスジを通して、全体の立場を考えながら接する
  • 部下には能力を上回る仕事を与え、思い切って任せていく
  • 職場の活力を起すため、互いに切磋琢磨の機会をつくる

<伸びない管理者>

  • 仕事は計画よりも実施主義、失敗しないように注意する
  • 問題の解決は満点主義で、じっくりソツなく処理する
  • 上司の考え、意見をよく聞いたうえで、それに従って解答する
  • 部下には、スジを通すよりも、その立場をよく考えながら接する
  • 部下には相応の仕事を与え、誤りなく果たすように指導する
  • 職場に波風を立てず、何事も無難にすごす
  • 自分のペースを考え、多少の余裕を持って行動する
  • いつも現在を大切にして、守りに徹していく

【注】このリストは深澤慶一郎氏の考えを引用